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ポリスチレン(PS)とは

歴 史

 ポリスチレンは1830年代にはシモン(独)によって天然の樹脂から抽出された固形物として、発見されているが、その後かなり経過した1920年代にシュタウディンガー(独)らによって、スチレンモノマーが鎖状に結合した高分子物質として認識されることになる。
 実用的には、1930年代には既にドイツおよびアメリカで工業化されており、70年以上の歴史と実績のある樹脂である。
 わが国においては、第二次世界大戦中、その製造や加工について研究されたものの実用には至らなかったが、1940年代後半に輸入が開始され、1950年代後半になると、海外からの技術導入により工業化に成功している。その後、海外からの技術導入や自社技術の開発により製造するメーカーが多くなって、汎用樹脂としての市場が確立されたが、1990年代の後半から2000年代には業界の再編成が進み、一時は10社を超えた製造メーカーも、現在では3社となっている。
 また、1990年代後半には、メタロセン触媒による重合でシンジオタクチック構造を持つポリスチレンが合成され、工業化された。これによって生成するポリスチレンは結晶性の高分子であり、不透明であるが、アタクチックポリスチレンよりも耐熱性に優れている。
 発泡ポリスチレンは、1950年にドイツで開発され、日本では1959年に工業化された。


参考文献
1) Charles E. Carraher, Jr.:GIANT MOLECULES –Essential Materials for Everyday Living and Problem Solving SECOND EDITION,p.151
2) 須本一郎:プラスチック材料講座 第11巻 スチロール樹脂,p.1-4 (1970)
3) 古本宏二 他:プラスチック技術全書 第8巻 ポリスチレン樹脂,p.1-2 (1970)

構 造

 ポリスチレン (polystyrene) はスチレンをモノマーとして付加重合で生成するポリマーであり、通常プラスチックスとして使用されるものの重合度は数百から数千の程度である。

構造

 重合する事によってできた四級炭素不斉炭素原子であるため、ポリスチレンの構造には立体規則性(タクティシティー、tacticity)が存在する。すべての不斉炭素が同じ絶対配置を持つものをイソタクチック(アイソタクチック)ポリスチレンと言い、絶対配置が交互に並ぶものをシンジオタクチックポリスチレンと言う。これらは規則正しい構造であるために、結晶構造が存在し、融点(Tm)が測定できる。また、絶対配置が不規則になった構造をアタクチックポリスチレンと言い、これは結晶構造を持たないため、融点(Tm)が存在しない。汎用樹脂として多量に使用されているのは、アタクチックポリスチレンである。


各種ポリスチレンの一次構造
イソタクチック シンジオタクチック アタクチック
イソタクチック シンジオタクチック アタクチック
Tg = 100℃、Tm = 240℃ Tg = 100℃、Tm = 270℃ Tg = 100℃、Tm無し
結晶化が遅い 結晶化が速い 結晶化しない

ポリスチレンは、上述のような一次構造を有するが、その重合度は通常均一ではなく分子量に分布を有する。これは、典型的には重合方式によって特徴付けられ、例えば、アニオン重合では極めて狭い分布のポリマーを得る事ができる。分子量の標準物質として市販されている“標準ポリスチレン”はこの種のものである。また、懸濁重合で得られるポリスチレンの分子量分布は広くなる。

ポリスチレンの典型的な分子量分布
ポリスチレンの典型的な分子量分布

ポリスチレンは透明で硬いプラスチックとして有用であるが、割れやすいと言う欠点を有し、この改良のために、エラストマー(一般的にはポリブタジエン)の存在下で重合して得られる耐衝撃性ポリスチレン(High Impact Polystyrene)も製造されている。耐衝撃性ポリスチレンにおけるエラストマーの分散状態は、次の写真に示すようなポリスチレンとエラストマーが海島構造をとっているのが一般的であり、分散しているエラストマー粒子のサイズは、通常数μmのオーダーである。

典型的な耐衝撃性ポリスチレンの透過型電子顕微鏡写真
典型的な耐衝撃性ポリスチレンの透過型電子顕微鏡写真

参考文献
1) 出光興産ホームページより
http://www.idemitsu.co.jp/ipc/resin/sps/characteristic.html
2) 高純度化技術体系 第3巻 高純度物質製造プロセス フジ・テクノシステム(1997) p664
3) Encyclopedia of Chemical Technology 3rd edition. Volume21. p808
4) プラスチック・データブック 工業調査会(1999)p391

製造方法

 ポリスチレンはスチレンモノマーを重合して得られ、重合機構は、ラジカル重合やイオン重合(アニオン重合、配位アニオン重合)で進行する。工業的には比較的容易に製造できるラジカル重合が主流である。また、シンジオタクチックポリスチレンはメタロセン触媒を用いた配位アニオン重合で行われている。
 重合様式には塊状重合、溶液重合、及び懸濁重合があり、現在、ポリスチレンの製造は純度の高い連続塊状重合法へ移行している。
 概略図で示すと、GPPSはスチレンを主原料に重合し、HIPSはブタジエン系ゴムにスチレンをグラフト反応させながら重合する。GPPSでは強度面から高分子量化、あるいは組成が単純なことから高生産性を追及したプロセスになっている。ポリマーはモノマーに溶解し重合の進行とともに粘度が上昇するため除熱が難しくなる。そのため、ラジカル重合による発熱を制御し暴走反応を抑制する必要があり、装置設計には粘性や除熱が十分に考慮される。一方、HIPSでは先ず、ゴムのグラフト化や生成ゴム粒子の形態(モルフォロジー)制御を行い、それに続く重合工程では滞留時間の適正化や滞留箇所を低減し微小塊状ゲル物(フィッシュアイ)を生成しないプロセスとなっている。
 その他、重合率、揮発分、分子量等のコントロールが行われ、重合槽には完全混合槽(STR)、ピストンフロー型反応器(PTR,塔式重合器)、静的混合器(スタティックミキサー;SMRリアクター)及びその組み合わせ等がある。

製造方法

参考文献
1) ラジカル重合ハンドブック,エヌ・ティー・エスp.629-639(2010)
2) 新ポリマー製造プロセス,工業調査会,p.175-203(1994)

物理的性状
臭い なし
融点 明確な融点はない
広い温度範囲(80℃〜100℃位から)で次第に柔らかくなる
引火点 345〜360℃
密度 約1.05 g/cm3
溶解度
  水
  その他の溶媒

不溶
メチルエチルケトン、トルエン等に可溶
自然発火温度 488〜496℃
用 途

ポリスチレンは5大汎用樹脂の一つであり、広範囲な用途に使用されている。

GPPSの用途

 透明で剛性が高い事を利用して、電気冷蔵庫の庫内部品等の家電部品、CDケース、レターケースのトレー、ボールペンの軸等に使用される他、最近では液晶表示パネルの拡散板や導光板などにも使用されている。
 また、延伸加工によって強度を高めたOPSシートは、スーパーやコンビニのお弁当や惣菜の蓋材として広く使用されている。更に薄いフィルムに加工したものは、封筒の宛名部分などに使用されている。

HIPSの用途

 不透明だが耐衝撃性と剛性のバランスに優れるHIPSは、家電・OA機器類のハウジング材や内部部品として幅広く使用されている。
 またシート状に加工したものから、食品容器類を中心に多様な包装資材に使用されている。ブローや射出成形でも容器類が作られており、乳酸菌飲料やヨーグルト容器に使用されている。

発泡PS発泡体の用途

 ポリスチレンは発泡させやすく、発泡体の断熱性を生かして、建材ボードや、カップ麺容器、魚箱などに使用されている。
 また極めて軽量で、剛性が高い事を生かしてスーパーやコンビニのお弁当や惣菜の容器や食品トレーにも広く使用されている。
 緩衝材や、畳の芯材等にも使用されている。

シンジオタクティックポリスチレンの用途

 結晶性であり、耐熱性と耐薬品性に優れる事を生かして、ハイブリッドカーの電装部品、家電、水周り、食器等の用途への展開が見込まれている。



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