スチレン・ポリスチレンの安全性

摂取量の基準値

WHO(世界保健機構)の飲料水の許容濃度

WHOはラットの飲料水にスチレンを混入して2年間試験を行った結果、最大無作用量(NOAEL) を7.7mg/kg/day としています。
これをもとに、不確実係数を1000として耐容一日摂取量(TDI)は0.0077mg/kg/day としています。
これは、体重50kgの人が毎日0.4mg摂取しても影響が見られないことを示します。
これらの結果をベースにWHOはスチレンの飲料水の水質基準を0.02mg/Lとするガイドラインを出しています。

EPA(米国環境保護庁) の 飲料水の許容濃度

EPAはビーグル犬に560日間スチレンを強制経口投与し、最大無作用量(NOAEL) を 200mg/kg/day としています。
これをもとに、不確実係数を10000として耐容一日摂取量(TDI)は 0.02mg/kg/day としています。
これは、体重50kgの人が生涯にわたって毎日1.0mg摂取しても影響が見られないことを示します。
これらの結果をベースにEPAはスチレンの飲料水の水質基準を0.1mg/Lとしています。

用語の説明

最大無作用量(NOAEL:No-Observed-Adverse-Effect Level)

化学物質の毒性試験で複数の用量段階で動物への毒性を観察したときの、影響が見られない最大用量のことをいいます。

不確実係数

リスク評価のための種々のデータには、不確実な点が多く含まれます。そこでリスク評価では、その不確実さによりリスクが小さく見積もられることがないよう、不確実係数を設定し、より安全側に立った評価をするようにしています。
一般的には、動物とヒトの違いである種差(×10)と感受性の違いである個人差(×10) を考慮した100を最初の値とします。さらに動物実験の試験期間、信頼性等の項目別に不確実なものがあれば、さらに係数を追加します。
現在国際的なルールはなく、国や評価機関がそれぞれ、妥当と思われる値を選択しています。

安全係数,説明係数、評価係数、修正係数、などの呼び方もあります。
耐容一日摂取量(TDI:Tolerable Daily Intake)

ヒトがある物質を生涯にわたって継続的に摂取した際に、健康に悪影響を及ぼすおそれがないと推定される1日当たりの摂取量のことをいいます。ADI(Acceptable Daily Intake)と基本的に同じ意味ですが、こちらは食品添加物や残留農薬などの残存量を評価するのに用いられています。